「良い加減の投資法」61 -「自社株買い」編 –

こんにちは、金融・投資 教育コサルタントの須原光生です。

最近、嬉しいことに私が保有している企業の株価が、急に上昇して驚きを味わいました。何か良い材料が出たのかと、上昇の原因を調べてみますと、「自社株買い」を発表していたからでした。本来、企業の余剰資金は、設備投資や配当金などに使うのが王道ではと感じますが、株価が上昇したので正直バンバンザイ!です。

「自社株買い」とは、文字通り、自社が発行している株式を、その企業自体が買い戻すことです。では、企業は何のために自社の株式を買い戻すのでしょうか?最も重要な目的は、株主への利益の配分を増やすことです。利益の配分方法でポピュラーなのは、配当金を増やす、いわゆる増配をすれば喜ばれますが、近年は、「自社株買い」を行う方が高い評価を得る傾向にあります。

なぜかと言うと、株式を買い付けて“消却”(市場に出ないようにする)すると、企業が生み出す利益に変更はないのに、発行済み株式数が減るので1株あたりの利益が増える事になります。1株当たりの利益が増えることは、1株の価値が上がり、株価の割安感から買いが入りやすくなり、株価水準が高くなることが期待されるわけです。結果、株主に対しては値上がり益につながることになります。

その他、企業がストックオプションや従業員持株会などで、取締役や従業員が株式を保有する目的に「自社株買い」を行います。因みにストックオプションとは、予め決められた価格で自社株を買う権利をいい、価格が時価より安かった場合、この権利を与えられた者は値上り益を通じて、将来、報酬が与えられることになります。どちらの自社株の取得方法とも、意欲や士気が高まり、モチベーションの向上が狙いです。

また、自社の株価が安く、低迷していれば、他社から経営権の取得を目指して、相手会社の株式を買収する手法である“敵対的買収”のリスクが高まります。自社あるいは従業員などの持ち株比率を高めることは、安定株主を増やすことになり、自社株買いによる株価上昇にもつながるので、“敵対的買収”にかかる資金も上昇し、買収が難しくなるという効果もあります。

「自社株買い」は良い事尽くめに思えますが、実は脅威も隠れています。それは、せっかく買い戻された自社株が再び市場に出戻って、発行済み株式数が減少しないリスクです。現実にそのような“裏切り企業?”が存在します。株主からすれば、企業が「自社株買い」をして、しっかり“消却”という手続きを踏み、本当に減少させる企業が心から安心できるということになります。

良い加減の投資法は、“会社の事情を一番良く知っている会社自身が自社株を購入する”ということは、まさに、株価が割安状態にあることをアピールしていると思います。

今後「自社株買い」を発表する企業は、未来への“自信の表れ”企業として捉え、投資対象に値します。
企業側は、絶対に投資家への裏切り行為を“消却”することですよ! 特に私が保有する会社は!(拝)