「良い加減の投資法」69 -「ラップ口座」編 –

こんにちは、金融・投資 教育コサルタントの須原光生です。

最近、ある官公庁の退職予定者のライフプランセミナーの講師をした後、退職金の運用は、ある証券会社の営業マンから、「ラップ口座」を勧められているがどう思われるかとの質問を受けました。皆さん、「ラップ口座」はご存知ですか?契約に対してはどう思われますか?

「ラップ口座」は、投資家と証券会社や信託銀行などの金融機関が投資一任契約を結び、資産運用や管理、投資アドバイスなどの金融サービスや、資産残高に対する手数料をあらかじめ包括的に決めている口座のことをいいます。また、「ラップ(wrap)」とは英語で「包む」という意味があり、資産運用に関する様々なサービスを包括して提供することから、その名が使用されています。

因みに「ラップ口座」の契約の大半が、投資信託(ファンド)専門で運用を行う“ファンドラップ”と呼ばれていて、日本投資顧問業協会によると、2011年には1兆円にも満たなかった資産残高は、最近は大手証券が積極的にテレビCMを流している影響もあり、18年9月末は9兆円近くになり、わずか7年位で契約件数も含め、驚くべき急成長ぶりです。

では、なぜ証券会社はCMなど販売に力を入れているかというと、これまでは、顧客に頻繁に投資信託を売り買いさせて、その際の手数料で儲けてきました。しかし、金融庁がそのような“乗り換え”手数料で儲ける仕組みを問題視したので、売買で手数料を取るのではなく、投資顧問料、口座管理料として定期的に手数料を生み出す仕組みが“ファンドラップ”になり、各金融機関も参入してきた次第です。

“ファンドラップ” のメリットは、自分の代わりに運用のプロが、自分の許容リスクに適した投資信託を選んでもらえ、経済や金利動向などの変化に対応して、定期的に運用商品の入れ替えをしてくれて、分散投資もでき、リバランス(資産配分の偏りの見直し)など、投資家本人では実行しにくい投資行動を行ってもらえ、運用結果は、大きな失敗をすることは少ないと思われます。

一方のデメリットは、やはり手数料が高すぎるのが問題です。例えば、大手証券会社のファンドラップは、投資一任受任料が0.4104%、ファンドラップ手数料が1.296%かかり、加えて購入した投資信託の信託報酬に最大で1.35%(商品によって上下する)ほどかかります。つまり、ラップ口座に預けている財産に対して毎年約3%かかってきて、運用が良くても補えないほど手数料としては高すぎます。

結果、「ラップ口座」の質問の答えは、①投資家が一番に儲かる話はありません。金融機関が一番儲かるようになっています。②「良い加減の投資法」を全部読み、自分で楽しむ運用を試みることです。③それでも運用を任せたいなら、出来るだけ手数料の安い金融機関を探すことです。但し、元本保証はありませんよ。

退職金は、長い老後の源、常に鮮度が落ちないように、しっかり自分で“ラップ”しておくお金です!(笑)