制度を見るのではなく患者を見る

「制度を見るではなく患者を見る」

その大切さに気付くきっかけとなった、忘れもしない相談がある。もう2年以上前のこと。

抗がん剤治療が長引き、仕事も休職状態が1年以上続いている50歳代の消化器がんの男性の奥様が「経済的に困り始めた」とご相談に来られた。

家計の蓋を開けてみると、住宅ローンの返済の負担が大きいうえに、生活費も夫婦2人にしては十分だと思われる金額を使っておられた。「主人には変わらない生活をさせてあげたいから」とおっしゃっていた。

私は、

①仕事ができない状況である

②初診日(この方の場合は体調不良で近所のクリニックに診察に行った日)厚生年金に加入している

③初診日から1年半以上が経っている

ことから、障害厚生年金3級を申請できると判断し、奥様に自信満々に提案した。

「仕事がこれまで通りできないということでも障害年金がもらえるんですよ。家計を支える収入になります」

奥様の返事は「それはできません、主人に「仕事をできない」と通告するようなものだから、復帰を目指して治療を頑張ってる主人に言えません」だった。

使える制度は誰もが何でも使いたいと思っている、その人に当てはまる制度は何だろうか、という視点でアドバイスをしていたその当時の私。患者さんの望んでいること、大切にしていることに、鈍感だったその当時の私。ご主人をたて、がんになっても変わらぬ生活をとサポートされている奥様の気持ちを汲み取り、障害年金の申請を望んでいないことが分からなかった。

その相談依頼、私は「制度を見るのではなく患者を見る」ということを大切にし、がん患者さんの相談に応じている。

 

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