「良い加減の投資法」⑧ ‐「打ち出の小槌」編‐

こんにちは、金融・投資 教育コンサルタントの須原光生です。

最近、投資信託で衝撃的なニュースが2つ入ってきました。

1つ目は、投資家に「安定・定額?」で毎月分配されることが特徴である「毎月分配型タイプの投資信
託」のうち80%が、分配に充てる資金の半分以上を元本(投資家自身が投資した資金で「タコ足配当」
と呼んでいる)を取り崩して充てているとのことです。

QUICK資産運用研究所が、日本の投資信託約4,000本の中で、投資家に毎月の分配金を支払う毎月
分配型の投信1,484本を対象に調べたデータで、平成27年10月に買って1年間保有し続けたとすると、
80%の投信が分配金の半分以上は元本を削って支払う「タコ足配当」状態になっているとのことです。

また、全額を元本から出している投信も20%(286本)あり、プロが稼いだ運用益だけで分配金を出
せているのは2%(37本)に過ぎないとのことが本当に驚きです。

2つ目は、投資家の中には「毎月の分配金の原資が元本(投資家自身が投資した資金で「タコ足配当」)
でトータルで投資資金は減っているとは知らなかった」人が多かったことが大きな驚きです。

毎月分配型投信の運用担当者は、毎月決まった分配を行うためには、安定的な収益を得る必要があり、
その結果、運用先は日本の債券への投資が中心となります。

ただ、日本の債券は安定的に利益を得られますが、利回りは限りなくゼロに近い非常に低い運用になる
ため、外国の先進国債券が投資対象の中心となり、最近はその債券も利回りが低くなり、新興国の債券
や国内外の不動産など、リスクの大きい商品へ運用を広げ、結果は不安定運用を余儀なくされる投資信
託が多数になりました。

毎月分配型投信は、超低金利時代の中、安定的に「毎月の年金生活の足しにする」「孫へのお小遣いに
なる」などの理由が先行し、リスクに対しての意識は薄れ、特に高年齢者層の投資家を中心に人気化し、
気軽に購入されています。

また、金融機関などの販売側も、高年齢者層の投資家にはキャッチコピーのように「年金」「小遣い」
になりうる商品と提唱していけば、自然と売れ筋商品となり、運用会社では毎月の分配金額の競争と新
商品の製作競争になっています。

運用者側には運用が悪ければ、投資家の資金を分配金に充てる「タコ足配当」という、表面上は安定分
配しているかのように見える「打ち出の小槌」資金が存在します。

一方、投資家側は毎月安定して分配金がもらえる有利な「打ち出の小槌」商品、との認識が先行して増
えてきたと思われますが、絶対「打ち出の小槌」商品が世の中に存在するはずはありません!!

しっかり幻想であると噛みしめてほしいものです。

でも、 “知らぬが仏”で毎月の分配金を楽しみにして、運用の勝ち組の如く、幸せな気持ちで暮らすこ
とも、まんざらでもないかもしれませんね。(笑)