「良い加減の投資法」㉓ -「アンカー」編 ‐

こんにちは、金融・投資 教育コンサルタントの須原光生です。

友人から以前、「A社が気に入り、現在の株価500円は割安と思うので投資を考えているけど、どう思う?」と質問されました。私は「自分がそう思うなら購入すれば?自己責任やから。」と返事をすると、友人が思案している何日間で、500円が上がり始め600円になり、その値段では買う気にはなれず、結局500円に下がるのを待つことにしました。ところが株価は下げるどころか、そのまま上がり続けて、現在は1,500円を超えて、本当に悔しい思いと本人自身に「怒り(いかり)」を感じていました。

このような光景は、友人だけでなく私も含め、株式投資でよく経験することで、「アンカリング効果」という投資家心理の罠に陥った状態なのです。

「アンカリング効果」の言葉の由来は、“アンカー”で「船の錨(いかり)」とされ、船を止めるために錨を海に下ろすと、船は錨と鎖で繋がっている範囲内でしか動けなくなり、船の行動範囲は極端に狭くなります。人間の判断力にもそれと似たような部分があるようで、“アンカー”は「最初に示された特定の数値=基準値」ともいわれ、行動の時にその基準値(友人は500円)を意識してしまう傾向があるのです。

まさに「アンカリング効果」は、最初に見たり、聞いたりした数字や言葉が印象的で記憶に残り、後で判断する場合に、脳裏に浮かび上がって、こだわりになったり、躊躇したり、衝動買いをしたりするなど、何らかの影響を及ぼすことをいいますが、株式投資の世界だけではなく、日ごろから私たちはいろいろな場面で「アンカリング効果」の罠にはまっています。

靴を買いに行った時、店頭で20,000円の表示だけがあると高く感じますが、3,0000円→20,000円の値引きの表示では、同じ20,000円でも3,0000円が“アンカー”になり、反対にお得感を感じてしまい衝動買いに走る場合や、2,000円のお弁当だけでは高く感じますが、1,000円・2,000円・3,000円のお弁当が並んでいると2,000円が買い易くなるなど、日常生活でも「アンカリング効果」は沢山あります。

全ての動きある数値は、最初に意識したときが底値かもしれないし、高値かもしれないし、平均的な数値かもしれません。最初に意識したときの数値に左右され過ぎずに、周りと比較したり、検証したりして、少しでも冷静さを養うことが“アンカー”「錨(いかり)」が「怒り(いかり)」へ変化することを回避する方法ではないでしょうか。

また、株式投資では、「錨」を上げて、行動範囲を広げ、「アンカリング効果」に影響さない冷静なタイミングで、株価上昇への思いを込めて、「造船」・「海運」・「フェリー」などの会社の株式を“買 ア(わ)ンカー!!”(苦笑)