わかるって嬉しい

証券会社に勤めていたとき、先輩から引き継いだお客さんの中にろうの方がいらっしゃった。バブルが崩壊し、投資信託の元本割れが続いていた当時、そのことを説明しなくてはならなかった。

電話で連絡することができないから、何度も足を運んだ。
知識も経験も少ない私にとって、紙に書いて説明するのは難しく、理解も納得もしてもらえず、「もういい」というのが最後の返事だった。

市の広報紙で「手話奉仕員養成講座(入門課程)」の募集を見つけ、9月下旬から受講しはじめた。
初回の講座で、手話は表情豊かであることに感動した。

次に、自分の名前の紹介の仕方を習った。
漢字を表す手話は、象形文字のようだったり、パントマイムのようだったり。

声を発せず手話で自己紹介をした。聞き手が一生懸命読み取ろうとしてくれる姿は温かく、「わかった」というリアクションはとても嬉しい。
相手の手話がわかると自信がつくし、もっと知りたい欲が出てくる。

数の表し方を習っているときに、若い女性ふたりが同じ誕生日であることがわかり、みんなで「へー」という手話をした。
それだけでもなかなかないことなのに、彼女たちは歳の手話も同じだった!
この偶然に対する驚きを、覚えたての数少ない手話で表現するのにみんな一生懸命になった。

 

美しい暮らし研究家 あきやまひろみ
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