わろてまえ劇場

わろてまえ劇場。

大阪のおおてまえ(大手前)にある大阪国際がんセンターでわらってしまえと、笑いとがん医療の実証研究に取り組む演芸ショーが「わろてまえ劇場」。

今月18日に第1回公演が開催され、桂文枝さんの落語に、会場は笑いの渦に包まれたそう。

 

「笑うことががんを抑制する」という話を耳にしたことがあるだろうか。

 

笑うという興奮状態が、脳幹を刺激する。その刺激でペプチドがたくさん分泌される。ペプチドによって、生まれながらに殺傷能力を備えている免疫細胞であるナチュラルキラー細胞が活性化される。ナチュラルキラー細胞の力が、がん細胞を抑制する。

 

これが「笑うことががんを抑制する」と言われている一般的な理屈である。しかし私が調べたところ、笑うことがナチュラルキラー細胞を活性化させることは証明できていても、残念ながら現時点では、がんを抑制するという事実としては、医学的に証明されているとは言えないようである。それでも、笑うことは免疫細胞を活性化させることだけでなく、ストレスを軽減させるということは証明されているようである。

 

これについての日本で初めての検証が「わろてまえ劇場」。

 

この企画に興味を持った私は、今年の年初に担当者の方を取材させてもらっていた。そこでお伺いした話では、もちろんがん抑制の被験者は、病院を受診しているがん患者であり、ストレス軽減の被験者は、なんと病院の医療スタッフとのこと。

検証方法の詳細はお聞きできなかったが、企画もネーミングも大阪らしく、とにかく病院内を明るく楽しくという思いだけでもプラスの効果があるように思う。

 

実はこの病院(前、大阪府立成人病センター)、「患者さんにも医療スタッフにも笑顔と幸せを」と、2014年には医師、看護師、薬剤師、理学療法士など多職種でAKB48の「恋するフォーチュンクッキー」を踊る企画をしている。

 

相談を受けた患者の中に、体のことを考慮して会社を休職していた時には鬱状態になりそうなほどの精神状態だったが、仕事を再開したら、体はしんどい時もあるけれど、職場の方と会って会話することで精神的にとても楽になったと話された方がいた。仕事への生きがいや充実感だけでなく、人と会話し、笑うことによる心への効果も大いにあるのではないかと思う。

 

一人でいても、なかなか心からの笑いには繋がらない。私のように、誰かが笑う様子を見て自分も笑ってしまうことだってあるだろうし、人とのコミュニケーションから生まれる笑いは、幸せを招くのではないだろうか。

また、がん患者の笑顔は、ナチュラルキラー細胞を活性化させて自身のストレスを軽減させるだけでなく、支えてくれる家族や友人、職場の仲間といった周りのサポーターを安心させる。

 

「わろてまえ劇場」の検証結果も楽しみであるが、医学的には証明できないような効果が大きいのが、笑うことではないではないかと私は思う。

 

 

 

がんライフアドバイザー® 川崎由華