大切な仲間ががんになったら

大切な仲間から「がんになった」と告げられたら、何か自分がサポートできることはないだろうか、という思いを持つだろう。でも、まずどんな風に声をかけたらいいのかと、戸惑ってしまう人も少なくないだろう。励ます何かいい言葉はないかと、頭をフル回転にして考える人もいるかもしれない。

 

私は、まずは「話してくれてありがとう」をいう言葉が大切だと考えている。がんになったことを伝えることは、とても勇気のいることでもあり、信頼を置いているからこそ打ち明けられることだろう。その感謝の気持ちを伝えることが、第一ではないだろうか。

それ以上は、相手が今の状況をどんな風に思っているのかを聴くことだけで十分なサポートであり、その場に特別な言葉はいらないと思う。

 

また、がんの治療中の仲間がいるが、どんな風に接していいのか分からないという声も耳にする。きっと大変だろうからという気遣いが、距離を置いてしまっていることにもなっている。

 

風邪を引いた時に、病院に行ったり薬を飲んだりして風邪を治そうとするのと同じように、がんになると、がんを治すことが生活の中でも最優先となる。

その治すための検査や治療に時間がかかる。特に治療が始まると、頻繁に通院が必要になったり、がんそのものや治療の副作用のせいで体調が優れなかったり、不得手なことができてしまう、ただそれだけのことである。

 

これまで通りにいかないことが一体どんなことなのか、困っていることに何か手伝えることはないのか、それを訊ねてみることから始めてみるのが良いと思う。

治療の副作用は、髪の毛が抜けたり、皮膚がただれるというような目に見えるものばかりではない。手足のしびれ、嘔気、口内炎、ダンピンク症状など、外見からは分からない副作用もある。リンパ浮腫という今後起こる可能性もある副作用もある。

 

例えば、リンパ浮腫を防ぐためには長時間立っているようなことは避けた方がいい。会う約束をするならば、満員で座れないような電車やバスの時間帯よりも、座って移動できる時間帯にすることもサポートに繋がることとなる。

つまり、決して特別なことをしなければならないと思うことはない。

 

そういう私も、自分が治したい、サポートしたいという思いが強く、何もしてあげられないことに自分の無力感を感じることがある。ある看護師の方がそんな気持ちを汲み取って、私に教えてくださった。

「何かをすることではなく、ただそばにいることでいい。誰かがそばにいてくれるという安心感、話を聞いてくれる人がいるという安心感、これが大きなサポートになっている」と。

そばにいてほしいと思ってもらえる存在であること。がんライフアドバイザー®の仕事に限らず、日々の生活においても大切にしたいことである。

 

 

 

がんライフアドバイザー® 川崎由華