実家にあったチラシ

「もう抗がん剤しかないと言われた」

「今やっているがん治療の効果を高めたい」

「生活の質を維持しながら治療を行いたい」

私たちはこのような患者様・ご家族様と向き合い、最大限の可能性を追求します。

 

年末に実家に帰ると、そんな文言が書かれたチラシが1枚、机の上に置いてありました。

 

チラシはA3を二つ折りにしたもので、中を開けてみると「進行がんでもあきらめない」という文字が目に飛び込んできました。そして左側には免疫療法(詳細は不明)と放射線治療によってがんが小さくなったという画像、右側には抗がん剤治療と樹状細胞ワクチン療法によってがんが消失したという画像。学会でも発表したという文言。

後ろのページには、そのクリニックの院長先生のコメントと写真、完全予約制の無料医療相談を行っているという案内が掲載されていました。

 

このようなチラシを見たら、長時間待たされるのに1分診療で説明の少ない主治医よりも話を聞いてくれそうだし、いつまで続くか分からないしんどい抗がん剤から解放されそうだし、一度話を聞きに行ってみようかという気持ちになるでしょうね。

周りに進行がんの方がいたら、こんなクリニックがあるみたいだから調べてみたら?と話してみようと思うのではないでしょうか?

 

尋ねはしなかったけれど、きっと10年近く前に子宮体がんを患った母も、再発への不安から、もしかしたらいつか役に立つかもという思いで、このチラシを捨てずに持っているのかもしれません。

 

気になる治療費のことは、チラシには一切記載されていません。

きっと藁をもすがる思いでこのクリニックの門を叩いた方は、保険診療ではなく、自費で高額だったとしても、それだけのお金を出す価値があるものだと思われるでしょう。

 

このクリニックに限らず、がんに効果があるという内容の文言の治療法やサプリメント、健康食品、水など、インターネットで検索したら山ほど出てきます。がん患者さんの相談を受けていると、患者さんから教わるモノがたくさんあります。

 

そんな患者さんの話を聞いてみると、そもそもは端的に説明する主治医の話をその場で理解できず、家に帰ってネット検索をするとのこと。

主治医に聞かずにネットに聞く。ふと目につくチラシ。知り合いの話。そこでいろんな情報にぶち当たる。不安な気持ちから救ってくれる情報、勇気づけてくれる体験談があれば、そこに希望を持つのは当然の心理です。

 

だから私はそれを受け入れないわけではありません。治療法を決定するのは患者さん自身です。

ただ、一番信頼を置く相談パートナーは、ネットでもチラシで知り合いでもなく、病状を把握している主治医や医療スタッフであってほしいです。そのためには病状や治療について相談できる時間やチャンスをもっと持てることが望まれます。

その時には、これから必要になるお金のことも一緒に考えていく必要があると思います。

 

最後に確認ですが、実家にあったチラシの治療が保険診療でないのは、最新すぎる治療だからではありません。日本の国では日本人の体に対し、科学的根拠に基づいて安全性と有効性が証明されていないからだということを、くれぐれも理解しておいてほしいと思います。

 

 

がんライフアドバイザー® 川崎由華