重粒子線治療のおはなし

総長「重粒子線治療を受けられた方に聞いてみると、がん保険の保険金で支払いされている方が多いようです」

参加者「ということは、がん保険に入っておいた方がいいってことでしょうかね?」

総長「それは…どうなんでしょう…ただそういう傾向があるということです」

 

そんなやりとりがあったのは、先日開催された、ある団体でのチャリティー講演会終了後の質問タイム。大阪国際がんセンターの総長が「がん医療の進歩と将来」というテーマで講演された後、会場で聴講されていた方から重粒子線治療に関心があると手が挙がりました。

 

重粒子線治療、耳にされたことはあるでしょう。

一言で言うと、重粒子線治療は放射線治療の新しい手法です。

重粒子線という通常の放射線治療のX線より重い粒子を用いて、高速で高エネルギーの照射が可能なので、がん細胞の殺傷能力が高いとされています。また、がんの場所や形にピッタリ合わせることもできるので、副作用も少ないと言われています。

 

それならば放射線治療じゃなくて重粒子線治療を受けたい、と思われるでしょう。

しかし今日の時点で、重粒子線治療が保険診療になっているのは、切除非適応の骨軟部腫瘍だけ。それ以外のがんに対しては自費診療となり、重粒子線治療費だけで約300万円。それに伴う診察、検査や薬の費用が別途必要となります。

 

そこで話に出てきたのが、最初のがん保険の保険金。

総長は詳しくはおっしゃらなかったけれど、先進医療と認められている重粒子線治療に対し、がん保険についている先進医療特約から保険金がおりたということでしょう。

重粒子線治療費をがん保険の保険金で支払いをしている方が多い傾向なのは、先進医療特約をつけているから重粒子線治療に踏み切れた方が多いということではないかと、私は推測します。

 

以前、がんと診断されたばかりの患者さんが「先進医療って受けられないでしょうか。保険に先進医療特約をつけてるんです。せっかくだから使わなきゃ損でしょ」とおっしゃいました。保険に入っていたから助かっているという声はよく耳にしますが、使わなきゃ損だという声は初めてで、少し心に引っかかったことを思い出します。

 

お金の安心は治療の選択肢を増やすことに繋がります。

しかし、治療にはそれぞれ条件もあり、お金があるから受けたいからと言って受けられるものでもないし、高額な医療ほど優れた医療でもありません。そこは誤解されませんように。

 

 

がんライフアドバイザー® 川崎由華