確定申告でがんに備える

確定申告のシーズンですね。
確定申告と聞いても、自分には縁のない話だと思う方もいるかもしれませんが、自分自身で昨年の1月から12月の1年間の収入から税金額を確定させて申告しなければならない方にとっては、この確定申告はとても重要です。期限の3月15日が迫ってきているので、焦り始めた方も少なくないはず。

がん患者さんの確定申告というと、医療費控除が思い浮かぶでしょうか。
がん治療にたくさんの医療費がかかった場合に申告して税金が戻ってくる、もしくは税金が安くなるというのが、医療費控除です。医療費控除のために、確定申告をする方もいるでしょう。

でも実は、医療費控除よりもずっと確定申告が重要になってくることがあります。
それは、確定申告によって計算された所得や税金額により、今後の医療費の金額が変わってくるということです(国民健康保険、後期高齢者医療保険の方の場合)。

がん治療中の多くの方は、1ヶ月に支払う医療費が高くなるので、高額療養費制度という公的医療保険制度を利用しています。
この制度により、1ヶ月にかかる医療費が一定額を超えた分は支払わなくてもよくなります。
この自分で支払う上限額は、年齢(70歳以上かどうか)と前年度の所得によって応じて異なっています。

つまり確定申告によって申告した所得によって、翌年1年間(8月~翌年7月)の医療費の上限額が決まるというわけです。

以前、ご相談をお受けした方で、前年は自営業で仕事をしていたけれど、今年に入って体調を崩してがんと診断され、治療中の今は、仕事を辞められて年金収入だけになったとおっしゃっていた70歳代の方がいました。
今は僅かな年金収入だけですが、高額療養費制度による医療費の計算は前年の所得に応じて計算されるため、医療費負担は大きくなっていました。

「医療費を支払ったら、生活ができない」
そう嘆いていらっしゃったけれど、高額療養費制度は翌年の確定申告によって今年の所得や税金の計算をし、その結果が出る翌年の8月まで、医療費の支払いの上限額は変更されないルールになっています。

このように確定申告は翌年の医療費を決めることにもつながっています。
手間のかかる面倒な作業ではありますが、得た収入も受けられる控除もきちんと申告しておくことも、私はがんへの備えの一つだと感じています。

高額療養費制度の詳細は厚生労働省ホームページをご覧ください→コチラ

がんライフアドバイザー®  川崎 由華