価値ある4,500円に~働き続けたいがん患者さんへ~

新年度がスタートして早2週間。
学校や職場、部署など新しい環境になった方、その方をお迎えする側の方、サポートする側の方など、誰もが何らかの立場で新年度を感じているのではないでしょうか。

私が相談業務に就かせていただいている医療機関先々でも、配置換えがあったとスタッフの方がご挨拶くださいました。新たな出会いに身が引き締まる思いです。

ところで新年度、私が携わるがん患者さんのお金や仕事の相談業務に関連することでも1つ大きな改正がありました。
それは、医師と産業医との間で、がん患者さんが治療と仕事を両立していくための情報共有を文書でやりとりした場合には費用が発生し、その費用は公的医療保険が使える形となりました。

と書くと、保険が使えるようになったということは、支払い額が少なくて済むようになったんだね、と思われる方もいるかもしれませんが、そうではありません。

実は今まで、ここのやりとりには文書料以外、費用が発生していませんでした。
つまり、医療機関の医師が職場にがん患者さんの病状や治療予定を伝える、産業医が医療機関の医師に職場環境を伝えるという両方の医師の専門的な労力に対して無料でした。
それがこの4月1日から、1つの治療と言わんばかりに、医療費がかかるようになったというわけです。

そう決定されたのが2月初旬。
医師の判断で薬の処方箋を書くのとは違い、患者さんの職場の産業医という外部の医師との連携が上手く成り立たないといけません。
そのうえ、これまでにこのような文書を書いたことのある医師はほとんどいません。
またどの医療機関でも、これをどんな風に医療に組み込んでいくか、検討中のようです。

産業医との連携で私が思い出すのは、企業の安全配慮義務を考え、就労に懸念を示す産業医と、主治医からの就労可能の許可がおり、働きたい気持ちが強い患者さんとの間を、医療スタッフの方が根気強く対応され、患者さんが復職に至れたというケース。
患者さんに費用が発生することになっても、このケースは価値のある支援だと思います。

文書が適用のものだったとして、このケースの場合なら、その金額は10,000円(主治医と産業医の連携に対する費用、文書料は別)+5,000円(それを支援する医療スタッフ体制に対する費用)になるでしょう。
保険証を使って3割負担なら4,500円です。
もしこの病院で治療を受け、高額療養費制度を利用しているのなら、その医療費の中に含めることができます。

これまで無料だったものが有料になり、もちろん患者さんにとって負担です。
でも、今回の改正により医療現場での就労支援体制は強化されるでしょう。

がん患者さんの働きたい想いが実りますように。
そして産業医がいない企業や自営業者など、働く人全てに対しての支援に繋がっていきますように。

がんライフアドバイザー® 川崎 由華