障害年金に振り回されている?!

がん患者さんから障害年金のことを聞かれることが増えてきたように感じています。
私がこの5年の間にお受けしたご相談のうち、直近100人の患者さんの相談内容を整理してみたところ、40歳代、50歳代、60歳代の方のご相談内容のベスト3に障害年金が入っています。
その理由としては、休職や退職、廃業によって収入が減ってしまったり、治療費が嵩張ってきたりした時の定期的な収入となる公的制度として、障害年金が大きな頼りになるということが、医療従事者や患者さんの間で認知されてきたからだと思います。

障害年金を受給している方は年々増えていて、平成23年度174万人だった障害基礎年金という国民年金の障害年金の受給者数は、5年後の平成28年度には189万人にも増えています(※1)。
ただし、この中でがん(新生物)を原因として障害年金を受給している方は、わずか1.1%(※2)。相談が増えているとはいえ、受給されているがん患者さんはまだまだ少ないのが実際です。

請求できるまでの日数や、請求できる身体状況、それに請求のための書類作成など、障害年金を受給できるハードルは、がん患者さんにとっては結構高いのです。
経済的にも身体的にも精神的にもしんどい思いをされているがん患者さんを見ていると、障害年金がもっと簡単に受給できたらいいのに、と私は思ってしまいますが、それは患者さん目線だから。
障害年金の支給の可否を決定する日本年金機構側からしたら、請求者数が増えたらその審査も大変ですし、簡単にOKを出していたら資金繰りも困ってしまいますね。

ここのところ、何人かのがん患者さんから「障害年金の請求の書類を出してだいぶ経つんですけど、いつ頃返事が来るんでしょうかね」と尋ねられました。

一般的には書類を出して3~4ヶ月ほどで可否の結果の書類が送られてくると言われています。障害年金を請求するほどしんどい思いをしているがん患者さんにとって、どんどん病状が悪化し、日常生活に支障を感じながら待つこの3~4ヶ月はとても長く感じるんだと思います。

また最近は、審査の結果が出るまでの期間が長引いているようにも思います。
先日の患者さんは、事情もあって審査結果が来るまで8ヶ月待ったとおっしゃっておられました。以前は各都道府県で審査されていたものが、東京に集約されて審査されるようになったことも関係あるのでしょうか。

障害年金を受給できるようになり、生活が助けられた患者さんもたくさん見てきました。逆に、生活の支えとして障害年金に期待していたのに、不支給の通知が来てしまった患者さんもいらっしゃいました。

障害年金に振り回されている、と言うと言葉が過ぎるのかもしれません。しかし、患者さんが自分の生活の糧の見通しが立てられるように、障害年金にももう少し受給できるための明確な基準が示されることを、私は切に願っています。

※1 厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況(平成23年・28年)」
※2 厚生労働省「障害年金受給者実態調査(平成26年)」

がんライフアドバイザー® 川崎 由華