樹木希林さん死去の報道を受けて

今月15日に樹木希林さんが死去されました。
がんを患っていた方が亡くなったというニュースを耳にすると、やっぱりがんは死んじゃう病気なんだという印象を持ってしまいますか?

樹木希林さんが「全身がん」だと世間に公表されたのは2013年3月だったそう。5年半前になります。
5年半もの間、体にがんをいくつも抱えながら生活をし、仕事までしていたと捉えると、どうでしょう?がんが体にあったとしても、生きることができるんだという印象に変わるのではないですか?

また「全身がん」という言葉は、世間に衝撃を与えました。
ちなみに医師が「全身がん」という病名をつけることはありません。体の中で離れた箇所に複数のがんがあるということを、樹木希林さんの言葉で「全身がん」と表現されたんだと思われます。樹木希林さんの語録の1つですね。

私のところに相談に来られる患者さんの中にも、再発転移で体にいくつかがんがある方はいらっしゃいます。データ集計はしていませんが、全体の3~4割くらいでしょうか。

相談の内容は、仕事を続けるか辞めるか悩んでいるとか、再発の時にはがん保険からのがん診断給付金がもらえなかったとか、健康保険から支給されている傷病手当金の受給期限が来て支給停止されてしまうとか。
少しでも収入が得られるよう就業継続できるように検討したり、障害年金の請求を検討したり、その方に応じた手立てを一緒に考えていきますが、初発のがんの方よりも仕事やお金の状況は厳しい方が多いのは正直なところです。

でも、このような相談が舞い込んでくるというのは、再発転移をして、がんが体の中にあったとしても、自分が生き続けられる見通しがあるからです。がんと上手く付き合いながら自分がどう暮らしていくのかを考えているからです。

きっとこの先、がんという病気は、もっともっと私たちが身近な病気として付き合っていくものになると思われます。付き合い方はその人を表すうえ、私たちの心得にもなります。
だから、誰かががんで亡くなったというニュースは、たとえ亡くなってしまったとしても、どんな風にがんと付き合っていたのかに目を向けてみてほしいと思っています。

がんライフアドバイザー® 川崎由華