5年生存率65.8%ってどう思いますか?

9月11日、国立がん研究センターから、がんと診断された人の5年生存率の最新データ、そして初めて3年生存率のデータも発表されましたね。

実はその前日、東京で講演をした際に2006~2008年にがんと診断された方の5年生存率のデータを出してお話したところ、「このデータは古いのではないか」というご質問を受けました。「生存率の統計を出すのは期間を要するようで、これでも一番新しいデータになります」とお答えした矢先の最新データの発表で、私はニュースを見ながら一人苦笑してしまったのですが。

今回発表された5年生存率は、2008~2009年に診断されたがん患者さんのデータで、がんと診断されて5年後の2013~2014年まで生存できたかどうかを見た結果から得られた数字です。
最新データにも関わらず、10年前にがんと診断された方の統計なのです。だから、参考にはなるけれど、今がんと診断された方が、自分と置き換えて考えるための数字ではないですよね。医療の進歩は早く、この10年でも治療法は大きく変わってきているのですから。

ちなみに、がん全体の5年生存率は65.8%と報道されていました。
この数字の意味はご存知でしょうか?

これは、がんと診断された人のうち5年後に生存している人の割合が、性別、生まれた年、および年齢の分布を同じくする日本人で5年後に生存している人の割合に比べたものです。
言葉を換えれば、がんになった人となっていない人の5年後の生存率を比較した数字です。
つまり、100%に近くなるほど、がんになったとしても5年後の生命に関係はないと言えるわけです。
今回の発表を見ると、前立腺がんは98.4%、乳がんは92.7%。この数字を見て、多くの方が5年の安心を持たれるでしょうね。

がんになったからと言って、必ず死亡理由ががんというわけではありません。今回の5年生存率のデータにも、患者さんの持病など、がん以外死因を完全には取り除けていない可能性があることも、国立がん研究センターの発表資料に記載されていました。
実は、今回発表された65.8%という生存率、前回の発表よりも低くなっているのです。日に日に進む医療を思うと、高くなって当然だと思ってしまうのですが、どうも他の死因が大きく影響してしまった結果だそうです。

また、国立がん研究センターによると、この生存率の統計の目的を「各医療機関が、自らの医療の質を見直すきっかけとなるデータを提供すること、国民に情報を公開することで、がん医療の透明性を確保することなど」としています。
つまり、医療者に対してより良い医療を求めていくためのデータであり、患者さんに自分の状況を知ってもらうためのデータではないのです。だって一人一人、病状も治療法も副作用の出方も違うのだから。先にも書いたけれど、やっぱり生存率の数字に囚われることはありません。
ある患者さんには「生存率なんて私には関係ない。生きるか死ぬか、2分の1です」と言われたこともあります。

また、ある患者さんは、「5年生存率って、単に診断から5年後に生存しているかどうかの数字であって、再発の有無や、意識の有無に関わらずどんな状態であろうと、生存は生存としてカウントされているんでしょう」とおっしゃいました。その通りです。5年後に、どんな暮らしをしながら生存しているのかは、この数字には出ていません。
と書いてしまうと、5年生存率の数字が高かったとしても、シビアに見てしまうかもしれませんが、どんな状態でどんな暮らしをしているか分からないのは、がんにならなくても同じこと。どんな暮らしをし、どんな風に生きていたいのか、そこをしっかり自分で持てるかどうか、ですね。

(参考)国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス がん登録・統計」統計ページ →こちら

がんライフアドバイザー® 川崎由華