キャンサーギフト

キャンサーギフト、という言葉を耳にしたことがあるだろうか?

キャンサーギフトとは、がんがくれた贈り物。がんになったことによって改めて気づいた、命の大切さだったり、新たな目標や考え方だったり、家族や仲間との絆だったり、人によって様々なキャンサーギフトがある。

以前、相談者のとても穏やかでニコニコとされる様子に、私は思わず「幸せそうに見えます」と言ってしまったことがある。

今後の家族の生活を考えていかなきゃいけないような深刻な話をしていたし、病状も決して安心できるものではなかった。だから、健康で仕事をしている私が「幸せそうに見えます」と声をかけることは、もしかしたら患者さんの気を悪くさせてしまう一言になるかもしれないと、言ってしまってから一瞬後悔をした。

でもその方は「そう見えますか?嬉しいです。幸せなんです」と照れくさそうに答えてくれた。

そして、がんになったことで、仲がいいとは言えなかった夫と一緒に出掛けるようになったとか、子供も優しく気遣ってくれるとか、姑にも言いたいことが言えるようになったとか、家族の話をたくさんしてくれた。その話の中から、今後のマネープランを考えていくうえでカギになるようなこと見つかり、道筋が立てられたことで、相談も無事に終わった。

キャンサーギフトを得た患者が、キャンサーギフトにたどり着くまでに、測り知れない辛さや悲しさを経験してきたのは間違いない。その経験があったからこそ、キャンサーギフトにたどり着けたことと思う。

また、相談患者からキャンサーギフトの話を聞かせてもらう度に、思い出す歌がある。私が子供の頃から好きな歌、さだまさしの「風に立つライオン」の一節。

「診療所に集まる人々は病気だけれど 少なくとも心は僕より健康なのですよ」

同じ言葉を言われても、心の状態によってポジティブに捉えられたり、ネガティブに捉えてしまったりするように、キャンサーギフトを受け取れるかどうかは心の状態によるのではないだろうか。受け取れた患者の心は、私よりも健康だと思う。

心の健康のためには、お金や仕事の悩みの解消も必要であるだろう。相談によって、心の健康を取り戻すことができたら、悩みに隠されてしまっている何らかのキャンサーギフトを確認できるはず。それは私の仕事の意義でもある。

 

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がんライフアドバイザー® 川崎由華