がんになっても働き続けたい

がんになっても、治療を受けながら仕事も続けていきたい。
東京都福祉保健局が行った調査『がん患者の就労等に関する実態調査』によると、がん患者の約80%が「仕事を続けたい」と回答している。

実際のところ、仕事を続けていきたいという希望は叶うのだろうか。

勤務中に倒れ、がんが見つかった患者がいた。
2週に1度の抗がん剤治療を始めるにあたり、倒れた上に今後も職場に迷惑をかけることが心苦しく、退職を促されてもやむを得ないと思っていた。
しかし職場が就労継続を望み、続けていきやすい方法を探すことになった。
医療機関との治療スケジュールの話し合いの結果、金曜に休暇を取って午前中に治療をし、元々休みである週末に体調を整えることで、休職の日数を最小限に抑えて働き続けることになった。

その一方で、希望が叶わず退職を余儀なくされる患者もいた。
骨転移があることから肉体労働は控えた方がいいものの、事務職であれば就労は可能であるというのが、主治医の意見だった。
患者は就職してまだ1年と少し、就業規則に定められている半年間の休職期間の後、部署替えをしてもらうことを電話で要望したが、会社側は難色を示した。
そこで、患者と上司、人事担当者に加え、医療者も加わって話し合いを行ったが、会社としては安全管理と他従業員との兼ね合いという理由から、どうしても受け入れられないとのことだった。

会社員であれば、勤務先が作成している就業規則に沿って、休職できる期間や勤務形態が決まっている。
就業規則でどう定められているかによって、がんになった時の働き続けやすさも変わってくる。

例えば、休職期間は長く定められている方がいい。無給ではなく有給で休める期間が長い方がいい。
最近では、有給休暇を翌年に繰り越せ、積み立てた分は病気の時に使える制度の企業も増えてきている。

しかし、患者の話を聞いていると、就業規則だけで決まるものではないと感じる。
職場で必要な人材であり、大切な職場の仲間だと思ってもらえているかどうか、そこで生まれる配慮や信頼関係が就労継続に大きく影響している。

例えば、がんになるまでの勤務歴は短いより長い方が、理解してもらえることが多いこともあるだろう。
どう休むかではなく、一緒にどう働けるかを考えてもらえる関係でありたい。

私が代表理事を務める一般社団法人がんライフアドバイザー協会では、先月、あるがん診療連携拠点病院と契約し、月に2度、院内で医療者の方と共に相談会を開いていくことになった。
相談会の名前は、『がん患者と家族の生活を支えるお金と仕事の相談会』と決まった。

がんライフアドバイザー®として、がん患者の就労相談に対し、単に就業規則や職場環境、治療スケジュールなどで応じることにとどまらず、人間関係や生きがい、生命、そしてマネープランやライフイベントといった家族を含めた暮らしから考えていく真の就労支援を目指したい。

がんライフアドバイザー® 川崎由華