仕事とがん治療の両立のために

研修会のテーマは『がん患者と共に働く』。

先日、大阪のがん診療連携拠点病院が主催する、企業の人事・労務担当者のための研修会があった。昨年からこの病院でがん就労支援相談員を務めさせていただいていることから、私はパネルディスカッションのコーディネーターとして参加した。

 

腫瘍内科の医師、がん相談員の看護師、産業保健総合支援センターの両立支援促進員、東京都がん患者の治療と仕事の両立への優良な取組を行う企業表彰の優良賞に選ばれた企業の社長の4名の講演と、その4名の方をパネリストに迎えてのディスカッション。

それぞれの立場で、がん患者の仕事と治療の両立支援のために、企業の方に伝えたいメッセージをお話しされていた。

 

その中で、がん相談員の看護師の方が、私も一緒にお受けした相談事例をお話された。本人と家族で今後の就労に対する考え方の相違があったが、家族ができる支援や経済面のアドバイスを行うことで、お互いの納得と理解の上で就労継続できた方である。

私は就労相談には、単に就業規則や職場環境、治療スケジュールなどで応じるのでなく、マネープランやライフイベントといった家族を含めた暮らしから考えていくことが真の就労支援だと考えている。

 

参加された方から、治療と仕事の両立支援に経営陣が関心を持ってくれず、社内でも温度差があるという声が挙がった。

がん罹患者を就労させることは経営に足を引っ張るとか、がんに罹患したら使えない人材になるという誤った思い込みがあるのだろうか。

 

がんという病に対し、他人事だという思いがあるのかもしれない。しかし現実は、2人に1人がいつかがんに罹患する。つまり、人との繋がりを持っている誰もが、支えるか支えられる立場、どちらかを必ず経験することになる。

そう考えると、企業の規模や業種はそれぞれであっても、企業として何ができるのかを考える時の基本は皆同じで、自分もしくは自分の大切な人ががんになった時、どんな手助けや配慮があったら嬉しいか、だと思う。そこから職場づくりや会社づくりが始まるのではないだろうか。

講演された社長さんの話にも、配慮という言葉が何度も出てきており、制度の上に配慮があるのではなく、実際は配慮から制度が生まれているのだと感じた。

 

そして、企業側から見たらがんに罹患した従業員であり、病院側から見たらがん患者である本人には、企業と病院の連携の橋渡しを上手くできる力も求められる。企業も病院もできることは配慮や支援でしかなく、自分自身から働きかけていくことが大切であることは、相談の中でも伝えている。

 

また、病院側も相談窓口を設けるだけでは、なかなか患者の声は届いてこない。私は、相談員だけでなく、患者の傍にいる医療スタッフ皆が、もっと患者の声を引き出せ、耳を傾けられる体制づくりも必要だと思い、そのために必要ながん患者の就労やお金、がんと暮らすための知識を持ったがんライフアドバイザー®を養成している。

 

今回の研修会は、私にとっても学びの多い時間であった。参加された方々が、がん患者と共に働くためにできることを見つけ、動き出すきっかけになりますように。

 

 

 

がんライフアドバイザー® 川崎由華