がん患者やその家族から障害年金のことを尋ねられることが、少しずつ増えてきた。
大半の方が、がんに関するホームページに利用できる可能性がある社会保障制度として紹介されていたり、医療機関のソーシャルワーカーの方から教えてもらったりして、障害年金のことを初めて知ったとおっしゃる。
知っただけでは、制度は利用できない。利用したいと自ら手を挙げ、認めてもらって初めて利用ができる。そのためには申請書類に自身の状況を記入して提出しなければならない。
障害年金は特に、その書類が複雑で厄介である。
申請書類を目にし、あまりの記入欄の多さ、それにあちこちに必要書類を取りに行かねばならないと分かり、気持ちが萎えてしまう方も少なくないと思う。障害年金の申請を考えるくらい日常生活に支障がある体調なのだから、尚更である。
先日、昨秋に相談を受けた患者のもとに、障害年金2級の通知が来たという報告を受けた。
申請するにあたり、書類の大変さに気力体力が追いつけるか不安を持っていらっしゃったので、ソーシャルワーカーの方、がん専門相談員の看護師の方、主治医の先生、患者の家族の方もフォローをされ、申請に向けて動いた結果である。
障害認定日に戻って認められたとのことで、初回に受け取れる障害基礎年金は数十万円。これからの治療にも、家族と過ごす時間にも、有意義なお金になるだろう。
障害年金の申請書類や医師に書いてもらう診断書の書き方については、医療機関のソーシャルワーカーの方に相談してみてほしい。患者本人がしんどい場合は、家族が代わりに話を聞いてみてほしい。また、障害年金を専門にしている社会保険労務士さんにアドバイスをもらうのも一つの手である。
書類を前にして悩み、時間だけが過ぎてしまうことのないように。
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参考までに、障害年金に関してよくある誤解
①障害者手帳をもらっている人が受け取れる年金である。
②がんは再発の場合でないと認められない。
③末期がんという医師の診断が必要となる。
④仕事をしていると認められない。
⑤傷病手当金を貰いきった後しか申請ができない。
⑥夫の扶養になっている人は受け取ることができない年金である。
正しくは
①障害者手帳と障害年金はベツモノであるので、障害者手帳が無くても障害年金の申請はできる。ただ、障害者手帳を持っている場合、自身の症状を伝えるために、障害者手帳の等級を障害年金の書類に記載すると良い。
②③末期がんという医師の診断が必要なのは、40~64歳の方が介護保険を利用する時であって、障害年金の申請は、末期がんでなくても再発でなくても可能である。
④仕事をしていても障害認定の基準に当てはまる状態であれば、障害年金は受給できる。
⑤傷病手当金と障害年金の両方を同時に受け取る際には調整が入るものの、傷病手当金を受給中であっても申請は可能である。
⑥専業主婦だった方が老齢年金を受け取れるように、夫の扶養になり国民年金に加入していることで障害年金を受け取れる可能性がある。
(全て、障害年金の申請および受給のルールに則ることが前提)
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