がん患者にとっての配偶者控除と改正がん対策基本法

先週は、がん患者の相談を受けている私にとって興味深い発表が2つあった。

12月8日、与党の税制改正大綱が決まり、その中で配偶者控除の見直しがなされ、控除を受けられる配偶者の給与収入の上限が、年間103万円以下から150万円以下に引き上げられた。

12月9日、改正がん対策基本法が衆議院本会議で可決され、がん患者の雇用継続に配慮するよう、企業に努力義務を課されることとなった。

働き盛りとされる20歳~59歳までの年齢では、男性よりも女性の方ががんに罹患する率が高い。夫の扶養の範囲内でパートタイマーや契約社員として働いていた女性が、がんになったことで仕事が継続しづらくなったとか、治療が落ち着いたので再就職を考えたいとか、仕事面での相談に来られることがある。

先週の2つの発表を受けて、消化器がんに罹患した50歳代の女性からの相談。

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契約社員としてある会社に勤務していましたが、休職制度がなく、検査や治療で休みがちになったことで、勤務先から辞めることを示唆されてしまいました。これ以上ここにいると職場の仲間に迷惑をかけてしまうと思い、仕事を辞めることにしました。雇用継続できるような配慮があれば、辞めずに済んだのかもしれません。

収入がなくなって経済的に生活が大変になりましたが、その後、転移が分かり、人工肛門と人工膀胱をつけたことで障害年金2級の認定を受けられたので、現在は障害年金が経済的な助けとなっています。この先、体調が良くなって、また少し働きに出てみようとした時、障害年金と合わせて150万円以下になるように調整すれば、配偶者控除を受けられるということですよね?

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認定されて支給されている障害年金も、働いて稼いだお金も、患者当人としては、どちらも自分が得る収入。だから混同しやすいが、税金を考える際には、どういう収入なのか1つ1つ分けて考える必要がある。

障害年金は、税金がかからない非課税所得にあたる。つまり、支給額=手取り額になるし、配偶者控除を考える時の収入には、一切含む必要はない。今後この改正が正式決定した場合、働いて稼いだお金が150万円以下であれば、夫が税金を計算する際に、配偶者控除を受けられるということになる。

しかし現状として、がんの経験の有無を問わず、再就職は容易なことではない。だから、今回決まった「がん患者の雇用継続に配慮する」ことは強く要望されていた。

具体的にどういったことがなされるのかは、企業判断に任せられるのだろうが、私は「社内制度」だけでなく「職場環境」からの配慮も非常に重要だと考えている。かける言葉や、副作用へのさりげない気遣いなど、がん患者が職場に求めていることは、身近な人が理解してくれていると感じるコミュニケーションであることも多いから。

 

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がんライフアドバイザー® 川崎由華