医療費控除がもたらすもの

確定申告の時期となった。たくさんの医療費を支払ってきたがん患者は、医療費控除の手続きをと、体に無理をして申告書類を作成したり、混み合った税務署に足を運んだりされている方もいるだろう。

しかし、医療費控除は確定申告の時期にしかできない手続きではない。1年中いつでも受け付けているものなので、私はいつも「早く申請をすれば、その分早くお金が振り込まれてきますが、焦ることなく体調の良い時に手続きを行えばいいですよ」とお伝えしている。

がん患者にとって、医療費控除の手続きで悩むところは、集めていた領収書のうち、何がOKで、何がNGなのかの仕分けではないかと思われる。

①「ネットでサプリメントを購入して飲んでいるんですが、これはどうでしょう?」

②「医療用ウィッグはダメですか?医療用っていうものを購入したんです」

③「免疫療法を受けて、これまで相談料と治療費とで100万円近いお金を支払いました。未承認の治療でしたが、医療費控除の対象ですか?」

医療費控除の対象となるかどうかの仕分けのポイントは、医師が認めた治療や療養のための費用かどうかである。よって、治療に必要だと医師が診断したものであれば、①~③はどれもOKとされる可能性がある(判断は各税務署の判断になる)。

がん患者や患者を支える家族は、仕分けに悩むほど、いろんなところにお金を投じ、がんを治そう、がんとの暮らしを良くしようと模索し続けている。相談をお受けし、話を聞いてみると、医師が勧める治療だけでは不安に感じ、それ以外の何かにお金をかけている方が多く、その中には治療費以上のお金をかけている方もいる。

お金をかけることが、心の安定に繋がっていることも大いにあると理解する一方で、使えるお金には限りがある現実も見据えなければならない。お金をかけることで、心身共にどんなプラスが得られているのかを確認し、今の満足だけではなく、少し先まで目を向けた使い方を考えて、患者一人一人のお金の処方箋が出来上がる。

医療費控除の手続きは、自分でがんに対するお金の使い方を見直すいい機会になる。それは医療費控除によって戻ってくるお金よりも、もっと大きなお金を動かし、がんとの向き合い方を変え、新たな自分の生き方を見出せるきっかけになるのではないか、と私は思っている。

 

 

 

がんライフアドバイザー® 川崎由華