私流のがんという病気の捉え方

私はがんになったことはない。

でも、いつか経験することだと思っている。

ただ、そのいつかが、まだ来ていないだけである。

そのいつかが来るのは、まだ待ってほしい。

がんを経験していないからこそ持てる視点で、やっておきたいことがたくさん残っているから。

 

私ががんという病気を、そう考えるようになったのは、3月に訪問した金沢にある元ちゃんハウスで、元ちゃんこと西村元一医師のお話を聞かせてもらってからである。西村先生は、これまで患者にがんを告知して治療をする立場であったが、突然の体調の異変から一夜にしてがん患者になられた。お話をお伺いした時も、がん治療中だとおっしゃっていた。

 

西村先生は、がんはありふれた病気のはずだからと、がんを受け入れてがんと共生していく心構えを教えてくださった上で、がんを経験してがん患者の痛みや辛さを共感するのではなく、私自身が健康でいることが、なによりも患者さんのためだと言葉をかけてくださった。その言葉がもとになり、私の中で、私流のがんという病気の捉え方が定まった。

 

先日、西村先生と同じように、一瞬にしてがん患者となったという方に出会った。

毎日元気に勤務していたのに突然職場で倒れ、搬送された先で緊急入院となり、検査結果でがんだと言われた。倒れた日以来、一年以上会社を休んでいるという。体調を見ながら復職できればよいが、副作用が強く、なかなかそうはいかない。いかに社会保障や社内制度を使っていくかという相談だった。

 

相談の中で、その方は「自分の命の長さは自分で分かるから」とおっしゃった。この言葉に対する即答は、命と向き合うがんの経験をしていない私には難しかった。西村先生なら何と返しただろうか。

 

西村先生が旅立たれたという悲しいお知らせに接し、心よりお悔やみを申し上げます。

 

 

 

がんライフアドバイザー® 川崎由華