「これから治療費がいくらかかるか心配なんです。見通しが立てられたら助かるんですが…」
というがん患者からの相談。
検査結果が揃い、主治医から今後の治療方針の説明を受けたけれど、漠然とした不安がぬぐえない一因が「お金」であることも少なくない。
この相談の言葉の裏側にある患者の心中は、
手術費用に入院費用、入院前に定期預金を解約しておかないと支払えないんじゃないだろか…
抗がん剤って普通の薬よりも高いって聞くし、いくら請求されるんだろう…
これまでの検査費用だけでもかなりの出費だったのに、これからいつまで医療費の支払いが続くんだろう…
といったところだろうか。
モノを買う、サービスを受ける、学校に入学するなど、どんな場合でも、内容と費用、それに伴う時間や日程を提示されて、それが妥当であるかどうかを検討してからお金を支払うのが当たり前。
しかし、医療現場では、その当たり前がなかなか通じていない。
受ける治療(サービス)の説明はリスクまで十分にあるものの、「11月中旬ごろ」とか「だいたい半年」といったとりあえずの日程で、詳しいスケジュールは曖昧であることが多い。
費用に関しては、主治医の説明では出てこなかった、と患者が口を揃えて言う。
説明がないだけでなく、ましてや、子どもの頃も社会に出てからも、詳しく学ぶ機会すらなかった医療のこと、お金のことなんて、患者が自分で見当がつくはずもない。
漠然と不安になって当然な話だと思う。
アドバイスの前に、私がまずそう話すと、
「そうなんですよね、だから全然知識がないんです」
「先生が最善の治療をするとおっしゃってくださってるのに、お金のことなんて言えなくて」
と、自分だけが不安なんじゃないこと、医療機関でお金の相談をしても大丈夫なんだということが伝わり、患者は皆ホッとした表情をする。
それが、前回のコラム『「相談者」ではなく「患者」だから』でも綴った「患者を見る」こととして、私が声をかけていることの1つである。
そしてこの相談に対し、私が専門家として応じることは、患者と医療スタッフと一緒に、たった2つのことを確認するだけ。
その「たった2つ」については次回のコラムで。